SSブログ
銀行業務 ブログトップ

ゆうちょ銀の住宅ローンなど条件付き容認 民営化委 [銀行業務]

12/18(火)の日本経済新聞の電子版に、掲題の記事が出ています。 http://www.nikkei.com/article/DGXNASFL180J9_Y2A211C1111000000/
正直、この議論は、あまりにもレベルが低過ぎて、がっかりしますね。そもそも、日本郵政グループの民営化の議論はどういうことだったのか。これは、財政投融資改革にまで遡る必要があります。詳しくは、財務省のHP(http://www.mof.go.jp/filp/summary/reform/index.htm)を見ていただきたいのですが、要は、郵貯など→資金運用部預託→財政投融資というルートを市場→財政投融資に変えるという政策判断がまずあったということです。そして、その背景の一つとして、「国民の貯蓄奨励」という郵貯等の政策目的も終わりを告げたということがあったということです。従って、ゆうちょ等を存続させるとすれば、そもそも資金運用部への預託で、自動的に鞘が抜ける仕組みがあったのがなくなったわけで、自己責任で運用できる仕組みも作る必要があり、それに国が関与すること自体が金融市場を歪めかねません。それが、民営化の議論に繋がって行ったということになります。郵政改革について、いろんなことが言われていますが、これが、議論の「幹」です。小泉さんや竹中さんじゃなくても、財政投融資改革から普通に議論をすれば、まず、こういった結論になります。

その後の状況は、皆さん、ご存知の通りです。相当ひどい議論もありますが、省略します。しかし、結局、上述の議論はどうなったのでしょうか?郵政族がどうのこうのといった政局的な利害の話は置いておくと、郵政民営化が修正された最大の理由は、実務上の不便性の改善(?)もありあますが、結局のところ、いくつか実務上のゆうちょ・かんぽで、郵便事業の低採算を補うということくらいしかありません。

(この点、株式処分の停止に関する法律ができた際の議論について、内閣官房のHPをご覧ください。)http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/youseikaikaku/index.html

確かに、上述の「金融市場を歪める」という観点については、「民業圧迫」か否かという議論はなされてはいますが、それ以前の問題として、我が国の金融市場市場をどうするのかといった議論が全くありません。財政投融資改革や郵政民営化の議論は、もともと、金融の市場化、自由化の議論の延長でなされてきたものです。サブプライム・ショックを経て、市場主義については、一部修正は必要あるのかもしれませんが、それとの関係は定かでありません。完全民営化するとユニバーサルサービスが脅かされるという議論もありますが、であれば、そういった義務を課された(その代わりに何か恩典もある)特殊な銀行形態とすればいいわけで、政府の株式保有とは全く関係ありません。

いや、完全民営化だけが解であると言いたいわけではありません。サブプライム・ショック以降、金融を何でも市場に任せればいいということではない、ということになったわけなので、金融システム上、それなりの合理性があれば、政府保有の(民間銀行と同様の業務を行う)金融機関があるというのも選択肢の一つかもしれません。であれば、そういった議論をしてほしい。それが、単に、(国のためということなのでしょうが、)「郵政」という組織の維持と民業圧迫かどうか(要は、強力なライバルは出現して欲しくない)という議論に終始してしまい、その中で、既成事実だけが積み上げられて行っているというのが残念です。報道によれば、金融庁が認可を渋っているようですが、まぁ、このままで行けば、よくわからない形での決着になりそうです。

そんな記事書いていたら、日本郵政の社長は元財務相官僚同士で交代するわ、それに、自民党の菅さんがイチャモン付けるわ・・・。 ずっとこんな感じなんでしょうね。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:仕事

日本の銀行のアジア進出 [銀行業務]

木曜日(12/13)の日経新聞に、三菱UFJ銀行のベトナムの銀行への出資http://www.nikkei.com/article/DGXNASGC12012_S2A211C1MM8000/
とみずほコーポレート銀行のラオスの銀行との提携http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM12074_T11C12A2MM0000/
がそれぞれ、朝刊と夕刊に載っていました。しかし、あくまで、記事を見る限りということですが、両者は、目的が微妙に違いそうです。みずほコーポレート銀行は、日系企業のラオス進出の支援ということのようですし、一方の三菱UFJは、日系企業の支援だけではなく、現地の金融全体をビジネスとして取り入れるのも目的が。みずほが「提携」で、三菱UFJが「出資」や「役員派遣」となっているので、おそらく、そうなのでしょう。

いずれにせよ、他にもそういった動きはあり、総論としては大変いいことだと思います。是非頑張ってもらいたい。ただ、気になることはあります。邦銀は従来、海外については、進出と撤退(規模縮小)を繰り返して来ました。現地の人の気持ちになってみればわかります。わざわざ外銀と取引するのは、地元行に比べてサービスがいい(提案内容がいい)か、条件がいいか、はたまた、地元行に貸してもらえないからです。正直、日本の銀行の実力が特に欧米銀より、優っているケースが、そんなに多いとは思えません。とすると、金利が安いとか、地元行や欧米銀が貸してくれないからといったケースが多くなると思います。日本ですら、外銀の貸出先は消費者金融や中小のノンバンク、中小の不動産業者といったところが多くを占めていたと言われています。増してや海外における邦銀はをや、です。リスク管理は大丈夫でしょうか?アジアの成長にうまく乗れば、事なきを得るかもしれません。ただ、グローバルに景気が不透明な中、アジアも何が起こるかわかりません。一時的には何かあるかもしれないが、中長期的には成長するので大丈夫という声もあるかもしれません。しかし、我慢できるかどうか?いろいろな意味で視野が短期的になっている現在、また、BaselⅢも決して楽ではない中、体力の問題もあります。いずれにせよ、「ババをつかまされて終わった」といういつか来た道とならないよう祈るのみです。

なお、この点、欧米銀はしたたかです。一般的には、金融危機の傷がまだ癒えない中、規制強化への対応もあって、資産を圧縮している欧米銀(特に欧州銀)であり、それもあって、邦銀はそのチャンスを生かして、アジア向けの貸出を伸ばしているといった論調かと思います。しかし、米銀が1980年代後半から90年代初頭にかけて、ラテンアメリカ向けの不良債権に苦しんだ経験から、資産回転型ビジネスに転じて行き、それに大手の欧州の銀行はも追随して行った経緯はよく知られています。つまり、彼らは、資産を抱えないで稼ぐ術を身につけているのです。いや、資産を抱える以上、上述のようなリスクは必ず抱えるわけで、ノウハウが乏しい分野ほど、こういった手法を使って、リスク分散を図る必要があります。確かに資産回転型ビジネスモデルは、行き過ぎると、サブプライム・ショックのようなことを起こしてしまいました。しかし、資産回転型型ビジネスモデル自体が悪いわけではありません。上述の様に、満期保有型ビジネスモデルへの反省から生まれたものです。ですので、程度をわきまえてやる分には、有効活用できるものです。プロジェクトファイナンスのシンジケーションなどはその典型でしょう。確かに、欧米銀は、アセットの保有に制約がある以上、アレンジャーのマンデートを取るのには不利です。しかし、それを補える実績と実力が彼らにはあります。ですから、邦銀が欧米銀にアセットを押し付けられて、おいしいところは彼らに持って行かれているということもあるのです。従って、単に邦銀の貸出が伸びているからといって喜んでいいとは限りません。

邦銀は、単なるシンジケーションの参加案件は、ノウハウを積んだり、プレゼンスを確保するためと割り切り、その目的のみに限定的に対応し、当面は、欧米銀に実力で劣るかもしれませんが、アセットのテイク力を生かして、アレンジャーの実績を積み、行く行くは、欧米銀に実力で伍して行けるようになる。そういった戦略でやれるのか?あるいは、スプレッドの厚い資産が積めただけでも喜ぶのか?

もし、邦銀が後者であれば、この先暗いと言わざるを得ませんが、そうではないことを祈ります。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:仕事
銀行業務 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。